宅配ドライバーを始めたばかりの頃、慣れない仕事に必死だった私。
そんなある日、神社の前の道を通りかかったところ、突然50代くらいのおばさんに呼び止められました。
「どうしました?」
車を停めて話を聞いてみると、思いもよらないお願いをされました。
神社に入れないので御守を買ってきてほしい?
おばさんは、こう言いました。
「訳あって神社に入れないのよ。悪いんだけど、御守を買ってきてもらいたいの」
私は配達の途中で忙しかったので、最初は断りました。
しかし、おばさんは、
「どうしても頼みたいのよ。他に頼める人がいないし、お礼もするから」
と言いながら、半ば強引に2,000円を渡してきたのです。
困っている事情があるなら仕方ないか……。
そう思った私は、渋々ながら引き受けることにしました。
どの御守を買えばいいのかわからない!
神社に入ったものの、どの御守を買えばいいのかわかりません。
悩んだ末に、無難そうな1,000円の御守を購入しました。
そして、おばさんのもとへ戻り、御守とお釣りの1,000円を渡しました。
すると、おばさんは、
「ありがとね!これ、お礼だから!」
と言って、返した1,000円を私の手に握らせてきました。
「こんなに、いいですよ」
と断りましたが、
「お礼だから。本当に助かったわ」
そう言い残して、おばさんは去っていきました。
いったい、なぜ神社に入れなかったのか?
これが、宅配ドライバーになって初めて経験した、ちょっと不思議な出来事でした。
今でも気になるのは、あのおばさんが、なぜ神社に入れなかったのかということです。
最初に思い浮かんだのは喪中という理由でしたが、それなら普通に説明してくれてもよさそうなものです。
何か個人的な事情があったのか、それとも別の理由だったのか……。
結局、理由を聞くことはできませんでした。
宅配の仕事をしていると、荷物を届けるだけではなく、思いがけない人や出来事に遭遇することがあります。
あのおばさんは、今でもあの神社に来ているのでしょうか。
あのときの出来事の真相は、今もわからないままです。


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